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執筆者の写真望月 史郎

中小企業経営者・スタートアップ創業者が知っておくべき法人税のポイント — 確定申告と中間申告


前回は、法人税の税率や優遇措置について説明しましたが、今回は法人税の申告と納付のタイミングについて詳しく見ていきます。特に、確定申告と中間申告は法人税における重要なプロセスですので、企業経営者やスタートアップ創業者はこれを理解しておく必要があります。


1. 確定申告とは

確定申告 とは、企業の1年間の利益を確定し、その利益に応じた法人税額を計算して申告・納付する手続きです。具体的には、事業年度終了後、企業はその期間のすべての収益や費用を集計し、最終的な利益を確定します。その利益に基づき法人税を計算し、納税を行います。

  • 申告期限: 事業年度終了日から2か月以内に法人税の確定申告書を提出する必要があります。例: 3月31日に事業年度が終了する企業は、5月31日までに確定申告書を提出しなければなりません。

  • 納付期限: 確定申告の際に計算された法人税は、申告書の提出と同じ期限である 2か月以内 に納付しなければなりません。


2. 延長できる場合と方法

法人税の申告や納付の期限が迫っている場合でも、特定の条件を満たすと申告期限や納付期限の延長が認められることがあります。ここでは、法人税の延長特例について詳しく説明します。


【提出期限の延長】

  • 延長特例特定の条件を満たす場合、法人税の確定申告書の提出期限が 2か月延長 されることがあります。


【申請条件】

次の条件に該当する場合、延長が可能です。

  1. 定款や事情により定時株主総会が開催できない場合通算法人または関連法人が、事業年度終了後2か月以内に決算に関する定時株主総会を開催できない場合。

  2. 所得計算が完了しない場合通算法人が多数存在し、所得の計算が完了せず、申告書の提出期限に間に合わない場合。


【手続き】

延長を受けたい場合、親法人が 事業年度終了日の翌日から45日以内 に所轄の税務署長に対して申請書を提出する必要があります。


【延長の範囲】

  • 一般条件通算法人または関連法人が会計監査人を設置している場合、事業年度終了後 4か月以内 に定時総会が開催されない場合、税務署長が指定する範囲内で延長が認められます。

  • 特別な事情特別な事情があり、やむを得ず事業年度終了後4か月以内に定時総会を開催できない場合、税務署長が指定する期間まで延長が認められます。


3. 中間申告とは

中間申告 とは、事業年度の中間点で行う法人税の納付手続きです。中間申告は、企業の税負担を平準化し、年末に大きな税額を納付する負担を軽減するために設けられています。事業年度が6か月を超える法人は、原則として中間申告を行う必要があります。

  • 提出期限: 事業年度開始から6か月が経過した日から 2か月以内 に中間申告書を提出する必要があります。例: 4月1日が事業年度の開始日であれば、9月30日が中間点となり、11月30日が中間申告書の提出期限となります。


【中間申告の種類】中間申告には2つの方法があります。1.前年度実績を基準とする中間申告(予定申告)前年度の法人税額を基に、6か月分の法人税を計算して中間納付します。多くの企業がこの方法を利用しています。

  • 計算式: 前事業年度の法人税額×中間期間の月数÷前事業年度の月数

これにより計算された金額が中間納付額となります。

2.仮決算に基づく中間申告事業年度開始から6か月の期間を一事業年度とみなし、仮決算を行ったうえで法人税を計算して納付します。この方法は、事業年度途中の状況に応じた柔軟な対応が可能です。

【中間納付をしなくてよい場合】

次の場合、中間申告書の提出および中間納付が不要です。

  • 前年度実績に基づく中間申告の結果、納付額が 10万円以下 の場合。

  • 法人税額が ゼロ の場合。


4. 納税における資金繰りへの影響

法人税の納付は、企業の資金繰りに大きな影響を与えます。特に、中間納付と確定納付が短期間に重なる場合、キャッシュフローが逼迫する可能性があります。中小企業やスタートアップは、適切な資金計画を立て、税額の見込みを早めに把握しておくことが重要です。

  • 例: 4月1日が事業年度の開始日であれば、5月31日に確定申告に関する納税、11月30日に中間納税が発生します。さらに、消費税なども考慮に入れる必要があります。


5. 利子税とその他のペナルティ

利子税 は、納付期限を過ぎて税金を納付した場合に課されます。延長が認められなかった場合や不注意で納付が遅れた場合、利子税が発生するため注意が必要です。

  • 延滞税: 納付期限を過ぎた場合に、税額に対して日割りで延滞税が課されます。

  • 無申告加算税: 申告期限までに申告を行わなかった場合、通常は税額の 15% が課されます。

  • 過少申告加算税: 申告した税額が少なかった場合、申告不足額に対して加算税が課されます。

  • 重加算税: 故意に虚偽の申告を行った場合など、不正行為に対しては最大で税額の 35% が課される 重加算税 が適用されます。


6. まとめ

法人税の確定申告と中間申告は、企業にとって重要な税務手続きです。これらの申告・納付のタイミングや方法を理解することで、税務リスクを軽減し、企業のキャッシュフローを健全に保つことができます。また、災害やその他のやむを得ない事情がある場合には、申告・納付期限の延長手続きを適切に行うことが重要です。税務戦略をしっかりと計画することで、企業の成長を支える基盤を築くことができるでしょう。

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